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2007年8月11日 (土)

戦争と平和

皆さんこんにちは。JENカブール事務所長の柴田哲子です。

ニコライ・ロストフは顔をそむけて、まるで何かをさがしもとめるように、遠くを、ドナウ河の流れを、空を、太陽をながめはじめた。空のなんと美しく見えたことか、なんと淡青く澄んで、しずかで、そして深い空だろう!沈みゆく太陽のなんと赤く、そして荘厳なことだろう!遠いドナウの流れのなんとやさしくつややかに輝いていることだろう!そしてもっともっと美しかったのは、ドナウの遠いかなたに青ずみゆく山並、修道院、神秘的な谷間、梢まで薄靄におおわれた松の林・・・・・あちらには静寂と、幸福があった・・・・・『何も、何もぼくは望まないだろう、何も、ただあそこへ行かれさえしたら』とロストフは思った。『ぼく一人と、それからあの太陽に、こんなにたくさんの幸福があるのに、ここには・・・・・呻きと、苦痛と、恐怖と、そしてこの不明、このあわただしさ・・・・・そらまた何か叫んでいる、そしてまたみんな後方へ掛けだした、ぼくもいっしょに走ろう、そうだ、これがあれなのだ、死なのだ、ぼくの頭上に、ぼくのまわりに・・・・・一瞬したら---ぼくはもはやあの太陽も、あの流れも、あの谷間も、二度と見ることがなくなってしまうのだ・・・・』
--「戦争と平和」トルストイ 工藤精一郎訳(新潮文庫)

突然ですが、私はロシア文学が好きです。
その中でも、実はドストエフスキーが一番好きです。
何故好きか、という理由はたっぷりあるので、それはまたドストエフスキーの本を紹介する時に書きたいと思います(笑)。

トルストイは、これまで小編しか読んだことがなかったのですが、読む時間はかなりあるだろうと思ってこちらに持ってきた名作、「戦争と平和」。
面白いです。

冗長だけれど、そこがまたロシア文学の良さ。
途中で、「あれ、これ誰だっけ?」と思って読み返さなければならないくらい(笑)沢山の登場人物が呼び名を変えて次々出てくる冗長なストーリーの中に、はっとさせるような、鋭く輝く人生の真実がちりばめられています。

この世の中に数多ある真実を、いかに明確且つ鮮やかな切り口で、心に残るような筆致で描けるか、それが優れた作家の条件なのかもしれません。

これだけ長い時間の洗礼を受けながらも、しかも国籍の異なる世界で親しまれてきたということは、それだけ普遍的な真実の描写に長けていたのだろうと思わされます。

トルストイの作品の中で、戦争を描いたものとしては、この「戦争と平和」の他に、名前を忘れましたが、2006年10月に何者かの手で殺されたアンナ・ポリトコフスカヤさんが書いた「チェチェンやめられない戦争」という本の扉に引用されていた作品がとても心に残る内容でした。
数十行というわずかな文章の中に、戦わざるを得なくなった人間の、悲壮感・絶望感が込められていました。
是非、読んでみたい作品です(どなたか、どこで通して読めるかご存知の方、教えてください!)。

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コメント

柴田さん
ご無沙汰しています。お元気そうで何よりです。
8月11日の共同通信ニュースで、韓国人ボランティア拉致・殺害事件に係る柴田さんの、「アフガン側に継続的な支援が届くことを優先して考えれば、退避する必要が出てくるかもしれない」、とのコメントが掲載されています。その通りだと思います。くれぐれも留意して下さい。さて、ドストエフスキーがお好きだとか。最近「カラマーゾフの兄弟」の新訳本(全5巻)が出ました。いま嵌って読んでいます。お薦めの1品です。

投稿: 大貝 | 2007年8月13日 (月) 20時54分

大貝さん、ご無沙汰しております!

コメントありがとうございます♪
また、共同通信のニュースの件、ご連絡ありがとうございました。

あらゆるものが破壊され、山のようなニーズのある国だからこそ、必要とされる支援を継続的に続けていくために、毎日の活動と生活にはこれまで以上に留意して過ごしていきたいと思っています。

カラマーゾフの兄弟、新訳本が出たんですね!
「謎ときカラマーゾフの兄弟」(新潮選書)もオススメです♪
面白さ倍増です。

投稿: 柴田哲子 | 2007年8月14日 (火) 05時21分

柴田さん、
おそらく、柴田さんの極近くにいるたろ○さんもお好きですよね?!
東京の事務所で、それでなくても私はアルバイトでお会いする時間が少ないのに、トルストイの言葉について、熱く!語ってくれていましたよ。
もう、すでに柴田さんも語られ済みですか??

そう、私は、アンナ・カレー二ナがスキです。
でも、それを、前の職場で言ったら、「Oh,No~!ロシア文学なんて・・」っと一蹴されました。やはり、根強い嫌悪感があるんですかね。。。。あるんでしょうね。でも、文学は文学ですけどね。。

投稿: U | 2007年8月14日 (火) 11時35分

Uさん、コメントありがとうございます!

たろ○さん、当地に来た直後に、「あのねー、トルストイねー、良いっすよー!!」と、目力を込めて力説してくれました(笑)。
常に何事についても、暑く、いや、熱く語ってくれます(笑)。

アンナ・カレーニナも良いですよね!
ロシア文学万歳!(笑)

投稿: 柴田哲子 | 2007年8月14日 (火) 15時57分

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